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しゅっけとそのでし

出家とその弟子

倉田 百三

「生命の川 第一巻第二号~第二巻第二号」1916(大正5)年11月16日~1917(大正6)年3月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,812 字 · 248 页

青空文庫

地上の運命に触れるのだ。そこから信心は近いのだ。

唯円 では私は恋をしてもよろしいのですか。

親鸞 (ほほえむ)お前の問い方は愛らしいな。私はよいとも悪いとも言わない。恋をすればするでよい。ただまじめに一すじにやれ。

唯円 あなたも恋をなさいましたか。

親鸞 うむ。(間)私が比叡山で一生懸命修行しているころであった。慈鎮和尚様の御名代で宮中に参内して天皇の御前で和歌を詠ませられた。その時の題が恋というのだよ。ところがあまた公家たちの歌よみの中で私のがいちばんすぐれているとて天皇のお気に召したのだよ。そして御褒美をばいただいた。私は恐縮してさがろうとした。すると公家の中の一人がかような歌をよむからにはお前は恋をしたのに相違ない。恋をした者でなくてはわからぬ気持ちだ。どうだ恋をした事があるだろうときくのだ。

唯円 あなたはなんとお答えあそばしましたか。

親鸞 そのような覚えはありませんと言った。するとその公家がそのようにうそを言ってもだめだ。出家の身で恋をするとはけしからんと言うのだ。ほかの公家たちがクスクス笑っているのが聞こえた。

唯円 まじめに言ったのではないのですか。