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しゅっけとそのでし

出家とその弟子

倉田 百三

「生命の川 第一巻第二号~第二巻第二号」1916(大正5)年11月16日~1917(大正6)年3月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,812 字 · 248 页

青空文庫

ねえさんたちがたくさんいらっしゃるではありませんか。

善鸞 いやお前でなくてはいけないのだ。

太鼓持ち さあ、所望じゃ、所望じゃ。

かえで しょうがないのね。(子供らしい声で歌う)

浅香三味線をひく。

萩、桔梗、なかに玉章しのばせて、

月は野末に、草のつゆ。

君を松虫夜ごとにすだく。

ふけゆく空や雁の声。

恋はこうした……

善鸞 もうよい。もうよい。(堪えられぬように)おゝ、あの口もとの小さなこと。

浅香 (まだ三味線を持ったまま)まあ、不意に途中でお切りなさるのですもの。

善鸞 見てやってください。この小さい子を。よその荒男が歌をうたえと責めまする……(涙ぐむ)も一つおあがり。(かえでに杯をさす)

かえで もうたくさん。

太鼓持ち (女の声色を使う)私がすけてあげましょうわいな。(かえでの前の杯を取って飲む)

浅香 きょうのあなたはどうかしていらっしゃるのね。

善鸞 いやどうもしてはいないよ。

浅香 きょうはもうよしましょうよ。お顔色もよくありませんよ。私少しも騒いだりする気になれないわ。

善鸞 さびしい事を言う女だな。(浅香の顔をじっと見る。やがて急に浅香の前髪の中に手を突き込む)