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なんぼく

南北

横光 利一

「人間」1921(大正10)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,591 字 · 40 页

青空文庫

」

「あんな奴、抛っとけ。」秋三は笑いながら云った。

「阿呆ばっかし云うて!」とお留は叱った。

「あんな碌でもない奴は、人目につかん処で死にさらしゃええんじゃ。」

「お前はよっぽど罰あたりやぞ!」

「俺が罰あたりなら、南の伯母やんら、とっくの昔罰あたって死んでら。のう伯母やん?」

「あれ見やえ!」とお留は云って姉を見た。

お霜は何か考えているらしく黙っていたが、

「お前、小屋建てるなら組で建てて貰うまいか?」と云い出した。

「組が建ててくれりゃ結構やけどなア。」

「そりゃ建てるわさ。いっぺん組長さんに相談してみよまいか?」

「どうなと勝手にせ!」と秋三は云って又奥庭の方へ這入って行った。

「そんなことしてると、またごてごて長びくでな。」とお留は云った。

「そうかてお前、実の所は組が引きとらんならんのやして、お前とこが母屋や云うたて、そんなこと昔から云うてるだけで、何も特別と安次とこと交際してたわけでもなしさ。うちかて株内や云うたてはっきりしたことって何一つないのやし、組が引取らんならんのや。なアそうやろう? その間、わし処に安次を置いとくわ。」

「そんねにうまい工合にいくやろか?」