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なんぼく

南北

横光 利一

「人間」1921(大正10)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,591 字 · 40 页

青空文庫

十一

彼は初めて秋三に復讐し終えたような快活な気持になった。

十一

一週間の後、小さな藁小屋が掘割の傍に建てられた。そこは秋三の家に属している空地であった。

その日最早や安次は自由に歩くことも出来なくなっていた。彼は勘次の家の小屋から戸板に吊られて新しい小屋まで運ばれた。

勘次は自分の手から全く安次が離れていったのだと思うと、今迄の安次に向っていた自分の態度は、尽く秋三に動かされていた自分の頭の所作事であったと気が附いた。けれども別に何の悔い心も起らなかった。ただ彼は自分の博愛心を恋人に知らす機会を失つたことを少なからず後悔した後で、それほどまでも秋三に踊らせられた自分の小心が腹立たしくなって来た。が、曽て敵の面前で踊った彼の寛大なあのひと踊りの姿は、一体彼の心の何処へ封じ込まねばならないのか? 彼は次第に不機嫌になって来た。

「厄介者が行ってくれたんで、晴々するわ。あんな者にいられると、こちまで病気つくがな。」

お霜は安次の立った後の掃除をしながらそう勘次に云った。勘次は何ぜだか母親に突きかかっていきたくなったが黙っていた。

「それでもお前のお蔭でみやいせ、蒲団三枚も損したわ。