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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

在线阅读直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 页

青空文庫

そして

「お待ちなされ」

将曹の行手へ、膝をすすめた。

「軽率なる御振舞、何故、証拠の品を、毀し召された」

将曹は、少し、額を、蒼白ませながら、小藤次と、伊集院に

「御渡りになったらしい」

と、いって、襖へ手をかけようとした。

「待たれいっ」

八郎太は、手を延した。

「将曹殿」

八郎太が、片膝を立てて手を延し、将曹の袴の裾を掴むと同時に

「無礼者がっ」

室中に轟く、大きい声であった。そして、真赤になった将曹は、掴まれている方の足を揚げて、八郎太の腕を、蹴った。八郎太は、将曹の、意外な怒りに、態度に、掴んでいた裾を放すと共に、無念さが、胸の中へ、熱い球のように、押し上って来た。

「何んと心得ているっ。け、軽輩の分際を以て、無礼なっ」

八郎太の、下から睨み上げている眼へ、憤怒と、憎悪を浴せながら、将曹は、襖を少し開けた。

「仙波、無益の事じゃ。対手による。戻ろう。戻って――」

将曹は、襖を少しずつ開けつつ

「両人とも、退れっ」

と、立ったままで叫んだ。

「伊集院っ、此奴を退げろ」

将曹の声は、顫えていた。二三寸、隙間の開いた襖から、中の模様が見えていた。六十に近い、当主の、島津斉興が、笑いながら、脇息に手をついて、坐りかけながら、将曹の声に、こっちを眺めていた。