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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

在线阅读直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 页

青空文庫

崩るる淵

「御部屋、御自身の濫りの修法は、なりませぬぞ」

と、いった。

「心得ております」

牧は、そのまま礼もしないで、真暗な次の間へ消えた。お由羅は、気味悪い、少し悪臭のある部屋の中で、じっと坐ったまま、微笑していた。

崩るる淵

蛇にしめつけられているような悪夢が、小太郎の頭の中いっぱいになり、身体の四方を包んでいた。

狂人のような眼を剥き出して、刀は、何処へ捨てたのであろう? 脇差を、尻の方に差して、口を開いて、血染めの片手で、脇腹を押え、片手で頭を押えて――切り裂かれた袴を引きずり、顔にも、着物にも、血をこびりつかせて、身体で、脚をひきずって行くように――よろめきつつ、立止まりつつ――

(水だ――水だ)

じっと、一所を見ていた眼が、顔が、水音の方へ向いた。脚だけが、残りの力を集めて動いているだけで、手は、何処を押えているのか? 眼は、何を見ているのか、判らなかった。身体は、痛みに、燃えていたが、もう、自分の痛みなのか、人の痛みを、自分で感じているのかさえ、判らなかった。

頭の毛が、手の血にくっついて離れなかった。その手を、人の手のように感じながら、静かに頭から放して、自分の前に、水が流れているように、震わしつつ、突き出した。