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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

在线阅读直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 页

青空文庫

綱手は、俯向いているだけであった。

「益満さんは、ああいう方じゃが――もし、そうなら――機を見て――綱手」

七瀬は、綱手を覗き込んだ。

「厭なのではあるまい」

綱手は、頷いた。

「わかりました――」

「然し、お母様、妾は――」

綱手の声は、湿っていた。

「いいえ、心配なさんな――妾には、益満さんのお心は、よう判っております」

「でも、一旦、操を――」

と、云った時、廊下に、忙しい足音がして

「よいよい」

と、いう声がすると、障子が開いて、老人が入って来た。二人は、平伏した。

「よう来た。わしは、調所じゃ」

二人は、平伏したまま、身体を固くした。調所が出し抜けに出て来るとは、二人の考えないことであった。

「御家老様とも存じませず、無調法を致しまして――」

「何々、この娘子は、お前のか」

「はい、至って不つつかな――」

「美しい女子じゃが、嫁入前かの」

「はい」

「よい聟があるが何うじゃ。侍でないといかんかな。これからはお前達、町人の世の中だぞ。金の物云う世の中じゃぞ。肩肱、張って騒ぐより、算盤を弾く方が大事じゃ。手紙でみると、お前の夫は何か騒ぎ立てているらしいが、そんな夫に同意せずと、離別されて、こうして国へ戻る方が、人間は利口じゃ」