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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
在线阅读直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 页
「逃れた奴はござりませぬ」
八郎太は、懐へ手を入れた。小太郎は、父の横へ片膝を立てて、父の取出した布をもって
「疵所は?」
「膝の上下――その辺一面に、ずきずきしているが」
小太郎は、袴の脇から手を入れて疵所を探った。そして、小柄で、袴を切り裂いて、手早く、手拭で太腿をきつく縛った。いつの間にか、腓から、向う脛も、探ると、べっとりと、指が粘って、脚絆の上へも、微かに血が滲み出していた。印籠の口を開けて、丸薬を出して
「気付」
と、父の掌へあけて置いて、足の疵所へ、脂薬を布と共に当てて繃帯した。八郎太は、腰の竹筒から、水を飲んで、小太郎が、手当を終って脚から手を放すと
「水盃」
と、云って、蒼白めた顔に、微笑して、竹筒を差出した。小太郎は、父の顔を見た。
「いろいろと、苦労させた――わしの子にしては出来すぎ者じゃ。斉彬公が、いつも仰せられた、身の代になったなら取立ててやるぞ、と――今まで、わしは、何一つ、お前に、やさしい言葉もかけなんだが、心の内では――心の内では――」
八郎太の声が湿ってきた。小太郎は父を見つめている内に、不意に、胸の奥から押上げてくる熱い涙を感じた。