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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

在线阅读直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 页

青空文庫

「水盃が厭なら、血を啜るか」

八郎太は、左腕を捲った。其処にも、疵が、口を開けていた。

「救からぬ命じゃ。牧の前にて、正義の徒の死様を見せてくれよう。小太、肩を貸せ。これでも未だ、へろへろ浪人の一人、二人を対手にしておくれはとらぬ」

八郎太は、血に曇った刀を右手に提げて、小太郎の肩へよりかかった。

「歩け。何を泣く」

「はい」

「山の上へ気をつけい。ここいらでは死にとうない。牧の顔を見てからじゃ。叶わぬ節には食いついてくれる」

八郎太は、元気のいい声であった。

伝教大師の廟の石に凭れていた一人が、身体を立てて

「あれは?」

と、いって、下の方を指さした。その指さす遥か下の登り口に、一人が、一人の手負に肩を貸して、静かに登って来ていた。

「周西では?――ないか?」

「ちがう――一人は手負だ」

呟いて、すぐ人々へ

「見張が、斬られたらしい」

と、叫んで、下の方を指さした。

「誰が――」

二三人が、同音に叫んで駈け出そうとした。山内が

「周章てるなっ」

と、止めて

「誰が斬られたか?」

二人の見張は、それに答えないで、じっと、登って来る二人を見ていたが

「見張ではない、あやしい奴じゃ――山内殿、此処へ参って――」