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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

在线阅读直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 页

青空文庫

小藤次は、佇んで振向いた。深雪の合図であった。

(拙いところへ、出て来ゃあがって――)

と、一寸腹が立ったが、すぐ

(見つかったら、大変だ)

と、思った。そして、自分の後方を跟けて来ている侍が、何うするか?

(もし、誰かが深雪を見つけて、馳せつけるようなら、もう一度、忍んで行って、何んとか、助けてやらずばなるまいが――)

小藤次は、闇で見えぬ広縁の方へ、深雪の姿を、何うかして、探し出そうとするように、眉をひそめて、首を延して見た。そして

忍ぶ恋路の――

と、小声で唄うと

「何故、行かぬ」

すぐ、側に、黒い影が立っていた。

(執拗い野郎だな、こん畜生あ)

小藤次は、腹が立った。

「御苦労様」

云い終らぬうちに、肩を、どんと突かれてよろめいた。

「何、何するんでえ」

とんとんと、深雪が、廊下の板を叩いた音が、又聞えた。

「奥の風儀を乱して――貴公は、誰の兄に当る? 取締るべき上の者が、何んの体じゃ」

「媾曳じゃあねえや」

「では、何用じゃ」

「聞いてみな」

「何? 誰に?」

聞いてみたかや、あの声を

のぞいてみたかや、編笠を――

と、云った刹那、くるりと、小藤次の身体が廻転すると、後方から帯を掴まれた。