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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

在线阅读直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 页

青空文庫

「深雪さん」

と、近々と、声がした時、廊下の外で

「未だやすまぬか」

老女の声であった。女達は、一斉に、ちぢんで、押し黙った。

「夜中に大声を立てて。お上は、お眠りじゃぞえ。騒々しい」

うち、一人の女が、深雪の近くで

「悪魔退散、婆退散」

と、囁いて、近くの二三人を笑わせた。暫くすると、ことこと、草履の音が去って、夜番が、庭を廻って来た。

「明日の勤めが辛い。皆さん、お先きに」

と、誰かがいった。そして、そのまま静かになった。暫くすると、歯ぎしりが聞えたり、小さい鼾が聞えたりしかけた。

深雪は、眠れなかった。何んだか、胸苦しく、頭の心が、少し痛むようで、額を押えると熱があった。そして、隣りの女の寝返りや、夜鳴き鶏の声が、はっきりと聞えているかと思うと、何かに、はっとして眼を開けた。

(今、少し眠ったのかしら)

と、思った。そして、又、歯ぎしりを暫く聞いていたが、又、うとうととした。指の痛みだけが、いつまでも、眠りの中に残っていた。

深雪は、灰色の中に、ただ一人で立っていた。

ふっと、気がつくと、その前の方に、一人の老武士が歩いていた。

(お父さまだ)

と、思った。