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わし
和紙
東野辺 薫
「東北文學」1943(昭和18)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,557 字 · 70 页
県の手漉紙工業組合長である旦那には、としゑ達がそばを食べているうちにも次次と人が来た。舅や姑が若い時代に世話を受けたのは大旦那で、今は別に家を建てて隠居しているそこへも行った。
昨夜のよしの話にも出て来たユミとは、初対面になく親しい瞳を向け合うことが出来た。町から来たら村はほんとにやばしべ(むさ苦しい)というので、ううん、とってもせいせいして長生きするわと答えた。
案外楽な仕事に思われた粗皮除も、次の日には腕が上らないまで肩が凝って、それに、はじめてかぐ楮や桑の皮の生々しい臭いで、吐き気が来そうに胸がむかむかするのであった。
パルプの処理では、最後の水解きだけは出来そうだった。水浸けにしたパルプを充分臼で搗いてから、またそれを水に解くので、こうして一旦どろどろにしたうえ袋に入れて濾したものを、紙の種類によるそれぞれの割合で楮に交ぜるのであった。搗き手は父と惣三だったが、水解きはよしかせんがした。そんなことはしないがいいと姑に止められたが、でも面白そうだからと、としゑはせんに代ってやってみた。坂の中途の井戸端に、野天のまま水解きの槽が据えてある。漉槽よりは小さく五尺に四尺ぐらい、二十四五本の竹の掻手の並んだものが槽の上から吊ってあって、これがマグワという名も教えられた。