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ぜんこんどんこん

善根鈍根

佐々木 邦

「オール読物」文藝春秋社、1935(昭和10)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,638 字 · 28 页

青空文庫

貞代さんも一つ上だったから、それに異存は更にない。

「本当よ。一つ上よ」

「すると大いに敬意を表さなければなりません。四つ上の姉さんです」

「まあ!」

「年は一つ上でも、入社が三年前ですから、都合四年の先輩です」

「厭よ。そんなにお婆さんにしてしまっちゃ」

「ハッハヽヽ」

射落し専門の奴が側についているのでは敵わない。しかし三谷さんにしても、一生独身で通す積りもなかったから、それから一年ばかりたって、藤浪君の申込に応じた。藤浪君は満足だったが、婚姻届を出す時に、貞江さんの年が自分より三つ多いことを発見した。

「失敗った」

「あなた、申訳ございません」

「二つ鯖を読んでいたんですね」

「でも仕方なかったんですわ。初めに一つ上と申上げてしまったものですから」

「苦情じゃないんです」

「嘘をついたようですけれど、堪忍して戴きますわ」

「しかし三つも違うとは思いませんでした」

「私、それですから、年が上ですからって、お断り申上げたのに、あなたは年の上の人が好きだと仰有って、御承知下さらないんですもの」

「一つ上の人が好きだと言ったんです。しかし苦情でも何でもありません。唯余り徹底的だから驚いたんです」