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ぜんこんどんこん
善根鈍根
佐々木 邦
「オール読物」文藝春秋社、1935(昭和10)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,638 字 · 28 页
一
一
善良な人間は暗示が利く。尤も悪人でも利かないことはない。泥棒は皆暗示の産物だとも言える。元来手癖が悪く生れついて来る人間はない。何かの切っかけで、地道よりも邪まの方を手っ取り早いように思い込む。それが数重なると、世の中を太く短くという暗示になって、悪い方へ転向してしまう。開業後は又暗示に満ち/\た生活を送る。一寸戸が開いていても、こゝの家は入れそうだという暗示を受ける。同輩が強盗をやったと聞けば、奴の出来ることなら俺にも出来る筈だという暗示を受ける。
しかしこれは泥棒の話でない。善い方の暗示の利く善良人の場合である。いや、善い方ばかりにも、限らない。悪人でないから、悪いのは利かないけれど、極く当り前の、可もなく不可もないのが利く。考えて見ると、悪人が悪い暗示に満ち/\た生活を送るように、善人の生活も種々雑多の暗示に満ち/\ている。その中、善いの丈けを受けて、これに則っていれば、聖賢になれるのだが、お互の受けて則る暗示は可もなく不可もないものが多いのである。何うしても難よりも易に就く。例えば或会社で重役が座談中に、
「それは君、お互生身の人間だ。