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ぜんこんどんこん

善根鈍根

佐々木 邦

「オール読物」文藝春秋社、1935(昭和10)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,638 字 · 28 页

青空文庫

三

鼻が悪いから勉強が出来ないという暗示が利いたのである。野球の季節が過ぎて冬になっても怠け続けた。もう一つには学校当局の見せしめもあった。選手はお情け及第の特権があるように年来言い伝えられていた為め、普通なら何うにかなりそうなところを用捨なくやられたのだった。藤浪君は慌てゝ医者に見て貰ったが、肥厚性鼻炎でも何でもなかった。二度目の四年級は相応勉強して取り返した。五年を卒えて高等学校の入学試験に失策ったけれど、これは誰にもあることで、人員の都合上拠ろない。その次の年に入学が叶って高等学校は三年間無事に通した。野球をやると同時に勉強の方も怠らなかった。中学校で懲りていたのである。

三

地方から東京へ出て来て帝大の法科へ通い始めた藤浪君は差当り得意だったが、その夏休みに失恋した。相手は従姉で年が一つ上だった。子供の時から仲が好かった。本家と分家だから、始終往き来をしていた。

「姉さん」

「…………」

「貞代さん」

「はあ」

「ハッハヽヽ」

「姉さんなんて厭よ、私」

「でも年が一つ上です」

「上って、私暮生れで、あなたは正月生れよ。二月とは違いませんわ」

「満で数えれば同い年ですね」