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ぜんこんどんこん
善根鈍根
佐々木 邦
「オール読物」文藝春秋社、1935(昭和10)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,638 字 · 28 页
と藤浪君は興味を催した。場合によってはお説法をしてやる積りだった。しかし傾聴している中に遂々引き込まれて、何うやら自分のところと似通った徴候だと思って、倦怠期の暗示を受けた。
それから間もないことだった。忘れていた貞代さんが御主人と一緒に上京して、子供を二人つれて訪ねて来た。主人は商用、自分は東京見物ですけれどもと言った。丁度日曜だったから、藤浪君は早速案内役を勤めた。夕刻宿屋へ送り届けて、「丸喜」君にも久しぶりで会った。郷里の話が出て、つい晩くなって帰ったら、貞江夫人は少し御機嫌が麗しくなかった。
「お帰りなさいまし」
「晩くなった。あゝ草臥れた」
「御苦労さま」
「見物となると東京の広いことが分るね。自動車で飛ばしたけれど、未だ/\見るところが沢山残っているから、明日社を休んで、もう一日案内してやることにして来た」
「…………」
「お前に宜しくと言ったよ」
「有難うございますけれど、私、あなたに伺いたいことがございますわ」
「何だい? 改まって」
「待遇が違いますわね」
「え?」
「私の親類とは待遇が違いますってこと」
「変なことを言うなよ」
「違うじゃありませんか? 私の叔父が来た時、あなたは社を休んで御案内して下さいましたか?」