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よじげんひょうりゅう

四次元漂流

海野 十三

「子供の科学」1946(昭和21)年3月~1947(昭和22)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,363 字 · 128 页

青空文庫

「わしは――」

わしは知らんといいかけたときには、課長は既に階段をのぼり切っていた。

「やあ、お先へ」

課長はいきなり声をかけられた。こげ茶の服を着た長身面長の三十五六歳の人だった。ウルトラジンの色眼鏡が彼の目をかくしている。

「なあんだ蜂矢探偵どのか。例によって早いところ、だし抜いて天晴だな」

課長の言葉には、すこしく皮肉のひびきがこもっていた。だが蜂矢探偵と呼ばれた長身の男はそれを気にとめない風で課長と肩を並べ、

「あの川北君は、僕と同郷の者で古くから親しくしていたのです。この間中から、しきりに僕に会いたがっていましたが、まさかこうなるとは思わず、もっと早く連絡をしてやればよかったですよ」

「本人はここで、君に何かしゃべったかね」

課長は話題を転じて叩きつけるようにきいた。

「いいえ、何にも……」と蜂矢は首を左右に振り「非常に体力を消耗していますよ。それに精神がすっかりさく乱している。正気にもどすにはちょっと手数がかかりそうですね」

「ふうん、厄介だな」

課長は警察医の黒川を手招きして、隅に寝ている川北先生の方を指した。医師は心得て川北先生の枕頭に腰をおろした。