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よつや、あかさか

四谷、赤坂

宮島 資夫

「東京日日新聞」1927(昭和2)年10月4日~9日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,947 字 · 18 页

青空文庫

『新宿は』と一口にいったものだ。南の方は御苑があって片側道に等しい。北の方は、北裏、大久保、その先は戸山が原だ。踏切の先は水道浄水場のために町は淋しくされている。到底発展の余地のない場所である。とこれが、大体の予測だった。

新宿の裏通り、新宿園となった土地は、往年白銅将軍とうたわれ鉄管事件で雨宮敬次郎と共に疑獄の一人となった、浜野茂の邸宅だった。邸内には池があり、鴨場があった。一時は松村辰次郎の手に渡り、再び浜野の許に帰った因縁つきの邸であるが、機を見るに敏な浜野といえども、今日の殷賑な光景は恐らく予想し得なかったところであろう。

私が子供時分の新宿駅附近といったら、四谷見附と相対して、更に一層荒涼たるものだった。五つか六つの時の事だからはっきりとは憶えていない。が、私は車夫の背中に負われて十二社の滝へ行った。寂しい町を長く歩いた。やがて広々として竹矢来をめぐらした所に出た。矢来の中には丈なす草が蓬々と生えているばかりである。矢来に添って歩く道がまた馬鹿に長かった。炎天が背中を照りつけて、熱い砂が濛々とたった。いつまで行っても同じような矢来と草だ。