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よつや、あかさか

四谷、赤坂

宮島 資夫

「東京日日新聞」1927(昭和2)年10月4日~9日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,947 字 · 18 页

青空文庫

絵双紙屋

水田のあった谷町を通り、牛込余丁町の方へ抜けるとこには、大きな竹藪と赤土の崖があった。晩春、つつじの咲く頃、小学校の運動会は、大久保のつつじ園に開かれた。今考えると戸山ヶ原の附近であろう。富士山の形をした山のあるつつじ園で、私達は駈けっこをした。晴れた空と咲き誇ったつつじと、競技場の紅白の幕が、今もなお明るく鮮かに私の記憶に残っているのを見ると、当時の子供は、全く薄暗い世界で生活していた感じが、しみ/″\する。団子坂の菊も、東京の人間の記憶から亡びた事を、浩祐氏によって語られて、私は亡びたつつじ園を一層強く回想した。『津の守にも、今は随分待合や芸妓家がふえたらしいが、僕の子供の時分には、四谷には芸妓家が二軒だった』とその晩T君に私は語った。が、しかもその二軒が、一軒は小学校の門前に一軒は校庭の垣根の後ろにあったのだから変である。三日月お蝶という、額に傷のある女が、学校用品店の隣の御神灯を下げた家から出て来たり、運動場の隅に立ってると、おさらいの三味線の音が聞こえてくるなどは、今日ならば必ず教育上の問題として、区会の議題位にはなったであろう。

絵双紙屋