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よつや、あかさか

四谷、赤坂

宮島 資夫

「東京日日新聞」1927(昭和2)年10月4日~9日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,947 字 · 18 页

青空文庫

焼打ち

国木田独歩の娘さんもここにいた。仲村彝の絵も可なりあるという話だ。愛嬌者の新島栄治が、にや/\笑って菓子を包んでいた事もある。私達には、東京随一とならなくとも、忘れ難い店である。

昔は酎割、葡萄割、ウィ、ブランの強烈な奴から、腹にもたまるどぶろくが安価なので、腹掛袢纏の客を呼んだ甲州屋も、遂にレストランとなってしまった。豊田、明菓が出来てコーヒー党を競って呼ぶし、支那料理の豊竜や一部の人には有名になった。書店紀の国屋の階上には、当代画壇の大家展覧会が随時に開かれるし、聚芳閣の店頭には、最近思想界の傾向を示す書類が遺憾なく陳列されている。――実用、娯楽、思想、美術、歓楽――

浅草も銀座も上野もいらない、あらゆる需要を一手に供給しようという、一大デパートメントストアを形造るような町の状勢、これが今日の新宿である。新宿御苑があって片側町であろうとも、浄水場が控えていようと、手近に多摩川、吉祥寺への近郊があり、四谷、赤坂、牛込から吸収し、遠く甲信、小田原の人々をここで食い止めようという努力である。誠に大東京の繁盛を最も顕著に物語っている場所となった。

焼打ち