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じごくのししゃ
地獄の使者
海野 十三
「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页
プロローグ
プロローグ
その朝、帆村荘六が食事をすませて、廊下づたいに同じ棟にある探偵事務所の居間へ足を踏み入れたとき、彼を待っていたように、机上の電話のベルが鳴った。
彼は左手の指にはさんでいた紙巻煙草を右手の方へ持ちかえて、受話器をとりあげた。
「ああ、そうです。私は帆村です。……やあ土居君か。どうしたの、一体……分っている、君が事件の中に居るということが……。しかもそれは、新聞記者たる君が仕事の上で補えた事件じゃなくて、君が好まざるにもかかわらずその事件にまきこまれちまったというのだろう。……お喋りはよせって。なるほどねえ。……えッ、君の妹さんが……」
帆村は、すいかけの煙草を急いで灰皿の中へなげこむと、そのかわりに鉛筆をつかんだ。軸の黄色い鉛筆だった。
「そうかなあ、君に妹さんがあったのかねえ。……いや失敬。それは困ったねえ。殺人容疑者としてあげられたとは、ちょっと面倒だね。……もちろん信じるよ、僕は。君の妹さんのことだから、同じように道義にはあついのだろうと……いや皮肉じゃない。よろしい、とにかくそっちへ行こう。十五分とはかかるまい。見附の東側の公衆電話のところだね。