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じごくのししゃ
地獄の使者
海野 十三
「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页
再出発
「さっきお電話が先生にありましたんですけれど、いくらお聞きしても自分のお名前を仰有いませんの、そしてただ先生に、“鼠も心臓麻痺じゃ”と、それだけを伝えてくれと仰有いましたんですけれど、何のことだかさっぱり分りません。ひょっとしたらその方は気が変ではないかと……」
「いや、分ったよ、八雲君。それは素晴らしい報告だ。鼠も心臓麻痺で死んだとね。いや全くそれは素晴らしい報告だ」
八雲千鳥は、帆村先生にも気が変になることが移ったのではないかと思い心臓をどきどきさせたことだった。
再出発
その日の午後になって、旗田邸へ検察係官は参集した。その朝の古堀裁判医の報告によって、新たな方向へ捜査を発展させる必要が出来たからである。
帆村荘六も、やはり案内を受けたので、定刻になって旗田邸へ入った。
長谷戸検事が、いつものように捜査進行の中心にいた。
顔触れの揃ったのを知ると、長谷戸検事は煙草の火を消して、別室から事件の部屋へと一同に移動を促した。
鶴彌の死んでいた例の広間は、事件当時と同じ状態に置かれてあったが、ただ部屋の中心の皮椅子にもはや鶴彌の惨死体は見当らず、そこが大木の空洞のようにぽっかりと明いていて、その見えないものが反って一種異様な凄愴な気分をこの部屋に加えていた。