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じごくのししゃ
地獄の使者
海野 十三
「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页
――この場合に二つあって、事件以前から鳥が居なかった場合と、事件後にこの籠の入口をあけて中の小鳥を外に出した場合――と、これだけの場合があるわけですね……。とにかくごらんのとおり籠の中には小鳥が居ない。そして空っぽの鳥籠だけがここに置いてある。なんという意地のわるいことでしょうねえ。いや、果してこれは偶然の神がこの意地わるをしたのか、それとも犯人がこの意地わるを試みたのか。警部さん、御感想はいかがです」
帆村の長広舌を聞いている間に、警部の汗はすうっと引込んでしまうし、顔色も元に戻ってしまった。そして警部はここで、用意しておいた次の言葉で帆村に酬いた。
「そう君のように、何でもかんでも目につくものについて、起り得るあらゆる場合を検討していったんじゃあ、事件の犯人を捕えるまでに何年かかるか分りゃしない。いや、本当にそんなゆっくりしたことをすると、犯人はみんな笑いながら逃げてしまって、一人として捕りやしませんぜ。その結果われわれは、年中たいへんな悪口の前に曝し者になっていなければならない。おお、やり切れない」
警部の言葉を、帆村はいちいち肯きながら終りまで傾聴していた。