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つぼ
壺
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1940(昭和15)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,624 字 · 34 页
又右衛門の姿は、これまでついぞ見たことのない厳しさをあらわしていた。
「おまえがどういう仔細で刀法をまなび始めたか、なぜ武士になりたいと望むか、そのわけはおよそわかっている……」又右衛門は穏やかなくちぶりで云いだした、「その理由はわかっているが、おまえの望みは間違っている、と申すよりさむらいというものに就いてまったく誤った考え方をしているのだ、……刀法の極意を会得し、よき主もあらば仕官をしたいとおまえは云った、つまり刀法の達人ともなれば武士の資格があると考える、その大根が違うのだ、なるほど武士は刀法をまなぶ、弓、槍、銃、馬術など、身にかなうかぎり武芸を稽古する、それはたしなみとして欠くべからざるものだから、けれどもそういう武芸を身につけたからといって少しも武士の証しではない、さむらいの道の神髄はそれとはまったく違うところにあるのだ」ではさむらいとはどういうものか、又右衛門はそう云いかけて言葉を切った。七郎次は全身の注意を耳と眼とに集め、いかなる言句もどんな表情も見はぐるまいと、けんめいにこちらを見あげていた。
「……さむらいとは『おのれ』