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おおえどおうごんきょう

大江戸黄金狂

野村 胡堂

「新青年」1939(昭和14)年11月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,754 字 · 53 页

青空文庫

赤崎才市の話は恐ろしく奇っ怪です。

「そいつは旦那」

貝六はゴクリと固唾を呑みました。あまりの事に続く言葉も出ません。

「七万両と聴いて肝を潰すなんざ、厄介の貝六に似気ないことじゃないか」

「驚きやしませんが、そいつはあんまり話が大きくて本当らしくはありませんぜ旦那」

「よしよしそれじゃ嘘だと思って来て見るが宜い、今から八月の十五日まで――三日の間俺に手伝ってくれたら、日当一両ずつ出すよ。その代り七万両の金が入ったって、手前には一文もやらないよ」

「日当一両も悪くねえが、七万両の山分けの方が、少しばかり分が良いようだ。乗りますよ、旦那その割勘の方に」

「人間はあまり賢こくねえようだが、勘定は確かだな、三万五千両の方が多いってことを、ちゃんと心得てやがる、その気で今日から仲間付き合いだ、宜いか貝六、前祝に一杯やり度えが、手前五百や一貫は持ってるだろうな、男のたしなみだ」

「ヘッ、自慢じゃねえが空っ尻だ」

「顔で呑める店は無いのか」

「八方塞がり」

「呆れた野郎だ、その絆纏を脱ぎな」

「ワッ、この一張羅を剥がれちゃ道中がならねえ、そいつは殺生過ぎるぜ旦那」

「何を言やがる、人に訊かれたら雲助の真似をしろ」