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こうじんぶつ
好人物
佐々木 邦
「婦人画報」1925(大正14)年5月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 52,609 字 · 107 页
「如何でございましょう」
と夫人は顎でしゃくった。
「これこそ思いつきでございますわ。女続きのところへ男のお子さんで大喜びのところですからね」
と安子夫人も無論大賛成で、兎に角際物という方針が立った。
「お幟なぞはもう屹度お求めになったでしょうし……」
「金太郎も月並みね」
「まあ/\、皆ナカ/\値が張りますね」
「鍾馗は宜いわ。些っと似ていますわ。矢っ張り高いわ」
「太刀が一番恰好よ」
と見て歩いている中に離れ/″\になってしまったが、少時すると内藤夫人は、
「奥さま! 一寸々々」
と何か大発見でもしたように呼んだ。安子さんが人を分けるようにして近寄ると、
「これ如何でしょう?」
「まあ! 怖いようね」
と安子夫人が眺め入ったのは鵺退治の人形だった。弓を持った頼政が傍に控え、猪早太が矢を負った怪物を押えつけて短刀を振り翳している。
「猿虎蛇は穿っているじゃありませんか?」
「成程、猿虎蛇ですわね」
「退治するところですから利いていますわ。あんな謡曲を教えて戴く面当ての意味にもなって、お礼にはこれに限りますわ」
「ホヽヽヽヽ、奥さまも随分ね」
「あら、ひどいわ。猿虎蛇の声だと仰有ったソモ/\の発頭人はあなたでございますよ」