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いかなるほしのもとに
如何なる星の下に
高見 順
「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页
……
(注五)
――――小柳雅子に会わないまでは、その何かうら悲しく佗しい慕情は、悲しいとともに楽しいものであったことを、私は会ったあとの苦しいにがにがしい慕情によって知らされた。小柳雅子への慕情というのは、どういうのだろうと、私は改めて考えさせられた。それは何か心の渇きの、ひとつの現われではなかったのか。それが、いざ小柳雅子に会うと、――それまでは、その慕情がフワフワと空に浮いている雲か霞かのような捕捉しがたい状態で、それゆえ悲しくもまた、春の霞、夏の雲でも眺めるように何か楽しかったものだったが、急に、朝野の言葉をもってすれば、「鯛に食いあきて鰯を食おうとしている」というようなハッキリした何かえげつない棍棒みたいなものが、その雲のなかにヌッと突き出された感じだった。私は、その棍棒を憎んだが、憎むことによって、それを再び気体化することは、もはや、かなわぬことであった。
――しかも、会いたいのである。「鰯を食おうとしている男」と雅子から見られるであろうと思うと、たまらなかったが、それでも会いたかった、一度会った以上は、舞台の雅子を遠く客席から眺めるというのだけでは、我慢ができなかった。