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いかなるほしのもとに
如何なる星の下に
高見 順
「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页
何か皮肉な調子の丁寧さだった。
「――上海にいる」
「上海に?」
口には出さないが、なにしに上海に行ったか、聞きたげな顔である。私はしかし黙っていた。池の噴水が、今は夏場とちがって誰にも顧みられないにもかかわらず、熱心に忠実に、だが佗しげに、そしてやや憤然たる趣きで、寒い水を吹きあげているのに、眼をやっていた。
――私の以前の妻の鮎子は、上海のバーにいた。もと彼女がいた銀座のバーが、上海に新しくバーを開いた。それに呼ばれて行ったのだ。――私の友人の一人は、彼女の上海行を聞いて、私にこう言った。
「そう言っちゃ、なんだが、――他の女の場合は、上海へ行くと聞くと、上海へね、ふーむとちょっと唸らせられるのだが、鮎子君の場合は自然な感じで、すッと受け取れるね。ついにといった感じで、鮎子君と上海とは何かピッタリしているね」
私は苦笑して何も言わずうなずいていた。鮎子の上海行は、鮎子ならというんで、聞いてもびっくりさせられない、――ということには私も同感だが、友人の言葉にはさらに、鮎子もとうとう落ちるところへ落ちたという意味が付加されている。それには私は同感できなかった。