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いかなるほしのもとに

如何なる星の下に

高見 順

「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页

青空文庫

「小柳君も今度K劇場から出る慰問団で支那へ行くんだってね」

「――ええ」

はにかんだ小さな声で、その声を補うような微笑を浮べている。

「いつ出発するの」

「明治節の日」

「どこから、――東京駅? ふーん。送って行くかな。何時?」

「――三時」

恥かしそうにして、相変らず小さな声だ。

「みんなで何人行くの」

たてつづけの問いに、――何か小さな鳥が打ちまくられて地上に墜ち哀しく羽搏きしているような、そんな感じの瞬きをしながら、救いをもとめるような顔を、サーちゃんに向けた。

「みんなで五人よ」と、サーちゃんが代って答えた。それを追って、雅子が、一生懸命努めてしているような微笑の顔を二度三度うなずかせた。

雅子は、言葉のかわりに微笑している感じで、――問いかけられなければ口をきかず、口をきいてもほんのわずかの言葉数だった。そんな雅子は、そのみずみずしい、というより日に当たらぬための蒼白い皮膚の印象からか、いたいけな鉢植えの草花をおもわせた。ひっそりと、はかなく花を開いている小さな植物の可憐しさだった。愛情よりも愛憐を、男の心のうちに掻き立たせる、いたいたしさだった。

「小柳君のうちはどこ」