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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页

青空文庫

朝いっしょに日雇い稼ぎに出た二人は、その夕方帰って来ると増田は河口の住居へ、河口は増田の住居へと、なんのためらいもなく、極めて自然に、あっさりと別れていったのである。どちらにも抵抗感やぎこちなさや、気まずい感じなどはなかった。それぞれがもともと自分の住居へ帰るような帰りかたであった。

その翌朝も、二人は水道端で待ち合せ、いっしょに仕事へでかけていった。どちらも平生と変ったところはなかった。きげんがいいというふうでもなく、ふきげんだというふうもなかった。

「天気が続いてめっけもんだ、これが半月も続いてくれればな」

「うん、半月もこの天気が続けばなあ」と河口が答える、「そうすりゃあめっけもんだがなあ」

こうして、肩を並べて二人はでかけていった。

勝子と良江もまえの日と少しも変らず、水道端でいっしょになると、水仕事をしながら会話をたのしんだ。

「こう物がたかくなる一方じゃ困ったもんだよねえ」と勝子が云う、「おどろくじゃないかお良っさん、塩引が一と切いくらしたと思う」

「そうなんだよまったく、呆れ返ったもんさね」と良江が答える、「これっぱかりの人蔘一本でさ、一本でよお勝さん、あたしゃまあ値段を聞いただけでつんのめりそうになっちゃったわ」