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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页

青空文庫

僕のワイフ

「かあちゃんのことは、とらんとこのおじさんも心配しています」

おくにさんは太鼓もお題目も中止して、けげんそうに六ちゃんのほうを見る、六ちゃんは母親をなだめるようにうなずいて云った。

「かあちゃん気にしなくっていいんだよ、気にするのがいちばん頭に毒だからな、だいじょうぶだよかあちゃん」

おくにさんは向き直って、お題目をとなえ始めた。

僕のワイフ

島さんは左の足が短い。右の足より三インチほど短いようだ。しぜん、あるくときにはかなり派手にびっこをひいた。

島さんは口髭を立てている。眉のきりっとした、眼のきれいな、品のいい顔だちで、こんな「街」に住むような人柄とはみえない。移って来て半年たらずのうちに、ここの住人たちの殆んどぜんぶと知りあい、誰彼の差別なくつきあい、いつもあいそのいい笑いと、陽気な話しぶりとでみんなに好かれた。

――ええ、僕は満足してます、なんの不満もありませんね。

島さんのようすを見ていると、こう云っているように思える、――この世もすばらしいし、この世に生きているということもすばらしいじゃありませんか、え。

ただ困るのは、と近所の人たちはかげで云いあった。