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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

「朝日新聞 夕刊」1962(昭和37)年4月1日~10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 页

青空文庫

土川春彦は口も八丁であり手も八丁であり、頭脳までが八丁であった。彼は絶えまなしに動きまわり、舌を回転させながら、夢の中でさえ事業をもくろんでいた。

「おどろいたね、きみ、われながらゆうべはおどろいたよ」朝めしを炊きながら春彦は、しんそこ驚嘆にたえないような表情で云う、「夢で新事業を思いつくのは珍しいことじゃないが、ゆうべはきみ、もくろんではいけない事業の夢をみたんだぜ」

七代目かぼちゃの眼がそろそろと上を見あげ、そろそろと正面に戻り、ゆるやかに下を見おろし、それからまた正面へ戻った。

「これまでは資本家どもにすぐ眼をつけられるか、小資本ではまかなえないような事業ばかりもくろんでいたんだな、こいつはきみばかげてたよ、うん、どうしてもっと早くそこに気がつかなかったのか、自分で自分が疑わしくなっちまうよ」

もくろんではいけない事業とはなんであるか、例をあげては語らなかったが、土川春彦がたいへん昂奮し、勢いづいていたところをみると、彼はついになにごとかをつかんだようであった。

「つまりこうだ」と春彦は云った、「初めはごく小さくて平凡にみえる、誰でも気がつくが、それが事業になるとは思えない、へ、あんなものがなんだっていうくらいの仕事なんだな、そのうちにこっちはじりじりと手を拡げていって、世間のやつらが気がつくじぶんに