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がくもんのすすめ

学問のすすめ

福沢 諭吉

「学問のすすめ」1872(明治5)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 87,080 字 · 170 页

青空文庫

いわんや年すでに長じて大人となりたる他人と他人との間においてをや。とてもこの流儀にて交際の行なわるべき理なし。いわゆる願うべくして行なわれ難きものとはこのことなり。

さて今、一国と言い、一村と言い、政府と言い、会社と言い、すべて人間の交際と名づくるものはみな大人と大人との仲間なり。他人と他人との付合いなり。この仲間付合いに実の親子の流儀を用いんとするもまた難きにあらずや。されども、たとい実には行なわれ難きことにても、これを行のうてきわめて都合よからんと心に想像するものは、その想像を実に施したく思うもまた人情の常にて、すなわちこれ世に名分なるものの起こりて専制の行なわるる所以なり。ゆえにいわく、名分の本は悪念より生じたるにあらず、想像によりてしいて造りたるものなり。

アジヤ諸国においては、国君のことを民の父母と言い、人民のことを臣子または赤子と言い、政府の仕事を牧民の職と唱えて、支那には地方官のことを何州の牧と名づけたることあり。この牧の字は獣類を養うの義なれば、一州の人民を牛羊のごとくに取り扱うつもりにて、その名目を公然と看板に掛けたるものなり。