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がくもんのすすめ

学問のすすめ

福沢 諭吉

「学問のすすめ」1872(明治5)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 87,080 字 · 170 页

青空文庫

十七編

人望論

人の商売を見て拙なりと思わば、みずからその商売に当たりてこれを試むべし。隣家の世帯を見て不取締りと思わば、みずからこれを自家に試むべし。人の著書を評せんと欲せば、みずから筆を執りて書を著わすべし。学者を評せんと欲せば学者たるべし。医者を評せんと欲せば医者たるべし。至大のことより至細のことに至るまで、他人の働きに喙を容れんと欲せば、試みに身をその働きの地位に置きて躬みずから顧みざるべからず。あるいは職業のまったく相異なるものあらば、よくその働きの難易軽重を計り、異類の仕事にてもただ働きと働きとをもって自他の比較をなさば大なる謬りなかるべし。

十七編

人望論

十人の見るところ、百人の指すところにて、「何某は慥かなる人なり、たのもしき人物なり、この始末を託しても必ず間違いなからん、この仕事を任しても必ず成就することならん」と、あらかじめその人柄を当てにして世上一般より望みをかけらるる人を称して、人望を得る人物という。およそ人間世界に人望の大小軽重はあれども、かりそめにも人に当てにせらるる人にあらざれば、なんの用にも立たぬものなり。その小なるを言えば、十銭の銭を持たせて町使いに遣る者も、十銭だけの人望ありて、十銭だけは人に当てにせらるる人物なり。