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がくもんのすすめ
学問のすすめ
福沢 諭吉
「学問のすすめ」1872(明治5)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 87,080 字 · 170 页
八編
わが心をもって他人の身を制すべからず
しかるに今かの忠臣義士が一万の敵を殺して討死するも、この権助が一両の金を失うて首を縊るも、その死をもって文明を益することなきに至りてはまさしく同様のわけにて、いずれを軽しとしいずれを重しとすべからざれば、義士も権助もともに命の棄てどころを知らざる者と言いて可なり。これらの挙動をもってマルチルドムと称すべからず。余輩の聞くところにて、人民の権義を主張し正理を唱えて政府に迫り、その命を棄てて終わりをよくし、世界中に対して恥ずることなかるべき者は、古来ただ一名の佐倉宗五郎あるのみ。ただし宗五郎の伝は俗間に伝わる草紙の類のみにて、いまだその詳らかなる正史を得ず。もし得ることあらば他日これを記してその功徳を表し、もって世人の亀鑑に供すべし。
八編
わが心をもって他人の身を制すべからず
アメリカのエイランドなる人の著わしたる『モラル・サイヤンス』という書に、人の身心の自由を論じたることあり。その論の大意にいわく、人の一身は他人と相離れて一人前の全体をなし、みずからその身を取り扱い、みずからその心を用い、みずから一人を支配して、務むべき仕事を務むるはずのものなり。