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がくもんのすすめ

学問のすすめ

福沢 諭吉

「学問のすすめ」1872(明治5)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 87,080 字 · 170 页

青空文庫

畢竟この偽君子の多きもその本を尋ぬれば古人の妄想にて、世の人民をばみな結構人にして御しやすきものと思い込み、その弊ついに専制抑圧に至り、詰まるところは飼犬に手を噛まるるものなり。返す返すも世の中に頼みなきものは名分なり。毒を流すの大なるものは専制抑圧なり。恐るべきにあらずや。

或る人いわく、「かくのごとく人民不実の悪例のみを挙ぐれば際限もなきことなれども、悉皆然るにもあらず。わが日本は義の国にて、古来義士の身を棄てて君のためにしたる例ははなはだ多し」と。答えていわく、「まことに然り、古来義士なきにあらず、ただその数少なくして算当に合わぬなり。元禄年中は義気の花盛りとも言うべき時代なり。この時に赤穂七万石の内に義士四十七名あり。七万石の領分におよそ七万の人口あるべし。七万の内に四十七あれば、七百万の内には四千七百あるべし。物換わり星移り、人情はしだいに薄く、義気も落花の時節となりたるは、世人の常に言うところにて相違もあらず。ゆえに元禄年中より人の義気に三割を減じて七掛けにすれば、七百万につき三千二百九十の割合なり。今、日本の人口を三千万となし義士の数は一万四千百人なるべし。