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がくもんのすすめ
学問のすすめ
福沢 諭吉
「学問のすすめ」1872(明治5)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 87,080 字 · 170 页
ゆえに一人の意を衆人に伝うるの速やかなると否とは、そのこれを伝うる方法に関することはなはだ大なり。
学問はただ読書の一科にあらずとのことは、すでに人の知るところなれば今これを論弁するに及ばず。学問の要は活用にあるのみ。活用なき学問は無学に等し。在昔或る朱子学の書生、多年江戸に修業して、その学流につき諸大家の説を写し取り、日夜怠らずして数年の間にその写本数百巻を成し、もはや学問も成業したるがゆえに故郷へ帰るべしとて、その身は東海道を下り、写本は葛籠に納めて大回しの船に積み出だせしが、不幸なるかな、遠州洋において難船に及びたり。この災難によりて、かの書生もその身は帰国したれども、学問は悉皆海に流れて心身に付したるものとてはなに一物もあることなく、いわゆる本来無一物にて、その愚はまさしく前日に異なることなかりしという話あり。
今の洋学者にもまたこの懸念なきにあらず。今日都会の学校に入りて読書講論の様子を見れば、これを評して学者と言わざるを得ず。されども今にわかにその原書を取り上げてこれを田舎に放逐することあらば、親戚、朋友に逢うて「わが輩の学問は東京に残し置きたり」