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がくもんのすすめ

学問のすすめ

福沢 諭吉

「学問のすすめ」1872(明治5)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 87,080 字 · 170 页

青空文庫

もし一国を全体の一物とみなして他の文明の一国に比較し、数十年の間に行なわるる双方の得失を察して互いに加減乗除し、その実際に見われたるところの損益を論ずることあらば、その誇るところのものはけっして誇るに足らざるものならん。

譬えばインドの国体旧ならざるにあらず、その文物の開けたるは西洋紀元の前数千年にありて、理論の精密にして玄妙なるは、おそらくは今の西洋諸国の理学に比して恥ずるなきもの多かるべし。また在昔トルコの政府も、威権もっとも強盛にして、礼楽征伐の法、斉整ならざるはなし。君長賢明ならざるにあらず、廷臣方正ならざるにあらず。人口の衆多なること兵士の武勇なること近国に比類なくして、一時はその名誉を四方に燿かしたることあり。ゆえにインドとトルコとを評すれば、甲は有名の文国にして、乙は武勇の大国と言わざるを得ず。

しかるに方今この二大国の有様を見るに、インドはすでに英国の所領に帰してその人民は英政府の奴隷に異ならず、今のインド人の業はただ阿片を作りて支那人を毒殺し、ひとり英商をしてその間に毒薬売買の利を得せしむるのみ。トルコの政府も名は独立と言うといえども、商売の権は英仏の人に占められ、自由貿易の功徳をもって国の物産は日に衰微し、機を織る者もなく、器械を製する者もなく、額に汗して土地を耕すか、または手を袖に