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がくもんのすすめ

学問のすすめ

福沢 諭吉

「学問のすすめ」1872(明治5)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 87,080 字 · 170 页

青空文庫

これを施すべき場所柄と、その強弱の度と、その向かうところの方角とによりて、不徳の名を免るることあり。譬えば銭を好んで飽くことを知らざるを貪吝と言う。されども銭を好むは人の天性なれば、その天性に従いて十分にこれを満足せしめんとするもけっして咎むべきにあらず。ただ理外の銭を得んとしてその場所を誤り、銭を好むの心に限度なくして理の外に出で、銭を求むるの方向に迷うて理に反するときは、これを貪吝の不徳と名づくるのみ。ゆえに銭を好む心の働きを見て、直ちに不徳の名をくだすべからず。その徳と不徳との分界には一片の道理なるものありて、この分界の内にあるものはすなわちこれを節倹と言い、また経済と称して、まさに人間の勉むべき美徳の一ヵ条なり。

奢侈もまたかくのごとし。ただ身の分限を越ゆると否とによりて、徳不徳の名をくだすべきのみ。軽暖を着て安宅に居るを好むは人の性情なり。天理に従いてこの情欲を慰むるに、なんぞこれを不徳と言うべけんや。積んでよく散じ、散じて則を踰えざる者は、人間の美事と称すべきなり。

また誹謗と弁駁とその間に髪を容るべからず。他人に曲を誣うるものを誹謗と言い、他人の惑いを解きてわが真理と思うところを弁ずるものを弁駁と名づく。