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がくもんのすすめ
学問のすすめ
福沢 諭吉
「学問のすすめ」1872(明治5)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 87,080 字 · 170 页
ゆえに後世の孔子を学ぶ者は、時代の考えを勘定のうちに入れて取捨せざるべからず。二千年前に行なわれたる教えをそのままに、しき写しして明治年間に行なわんとする者は、ともに事物の相場を談ずべからざる人なり。
また近く一例を挙げて示さんに、怨望の流行して交際を害したるものは、わが封建の時代に沢山なる大名の御殿女中をもって最とす。そもそも御殿の大略を言えば、無識無学の婦女子群居して無智無徳の一主人に仕え、勉強をもって賞せらるるにあらず、懶惰によりて罰せらるるにあらず、諫めて叱らるることもあり、諫めずして叱らるることもあり、言うも善し言わざるも善し、詐るも悪し詐らざるも悪し、ただ朝夕の臨機応変にて主人の寵愛を僥倖するのみ。
その状あたかも的なきに射るがごとく、当たるも巧なるにあらず、当たらざるも拙なるにあらず、まさにこれを人間外の一乾坤と言うも可なり。この有様のうちに居れば、喜怒哀楽の心情必ずその性を変じて、他の人間世界に異ならざるを得ず。たまたま朋輩に立身する者あるも、その立身の方法を学ぶに由なければ、ただこれを羨むのみ。これを羨むのあまりにはただこれを嫉むのみ。