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がくもんのすすめ

学問のすすめ

福沢 諭吉

「学問のすすめ」1872(明治5)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 87,080 字 · 170 页

青空文庫

しかるに今、富強の勢いをもって貧弱なる者へ無理を加えんとするは、有様の不同なるがゆえにとて他の権理を害するにあらずや。これを譬えば力士がわれに腕の力ありとて、その力の勢いをもって隣の人の腕を捻り折るがごとし。隣の人の力はもとより力士よりも弱かるべけれども、弱ければ弱きままにてその腕を用い自分の便利を達して差しつかえなきはずなるに、いわれなく力士のために腕を折らるるは迷惑至極と言うべし。

また右の議論を世の中のことに当てはめて言わん。旧幕府の時代には士民の区別はなはだしく、士族はみだりに権威を振るい、百姓・町人を取り扱うこと目の下の罪人のごとくし、あるいは切捨て御免などの法あり。この法によれば、平民の生命はわが生命にあらずして借り物に異ならず。百姓・町人は由縁もなき士族へ平身低頭し、外にありては路を避け、内にありて席を譲り、はなはだしきは自分の家に飼いたる馬にも乗られぬほどの不便利を受けたるはけしからぬことならずや。

右は士族と平民と一人ずつ相対したる不公平なれども、政府と人民との間柄にいたってはなおこれよりも見苦しきことあり。幕府はもちろん、三百諸侯の領分にもおのおの小政府を立てて、百姓・町人を勝手次第に取り扱い、あるいは慈悲に似たることあるもその実は人に持ち前の権理通義を許すことなくして、実に見るに