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がくもんのすすめ

学問のすすめ

福沢 諭吉

「学問のすすめ」1872(明治5)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 87,080 字 · 170 页

青空文庫

顔色容貌の活発愉快なるは人の徳義の一ヵ条にして、人間交際においてもっとも大切なるものなり。人の顔色はなお家の門戸のごとし、広く人に交わりて客来を自由にせんには、まず門戸を開きて入口を洒掃し、とにかくに寄りつきを好くするこそ緊要なれ。

しかるに今、人に交わらんとして顔色を和するに意を用いざるのみならず、かえって偽君子を学んで、ことさらに渋き風を示すは、戸の入口に骸骨をぶら下げて、門の前に棺桶を安置するがごとし。誰かこれに近づく者あらんや。世界中にフランスを文明の源と言い、智識分布の中心と称するも、その由縁を尋ぬれば、国民の挙動常に活発気軽にして言語容貌ともに親しむべく近づくべきの気風あるをもって原因の一ヵ条となせり。

人あるいは言わん、「言語・容貌は人々の天性に存するものなれば勉めてこれを如何ともすべからず、これを論ずるも詰まるところは無益に属するのみ」と。この言あるいは是なるがごとくなれども、人智発育の理を考えなば、その当たらざるを知るべし。およそ人心の働き、これを進めて進まざるものあることなし。その趣は人身の手足を役してその筋を強くするに異ならず。