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がくもんのすすめ

学問のすすめ

福沢 諭吉

「学問のすすめ」1872(明治5)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 87,080 字 · 170 页

青空文庫

妻妾、家に群居して家内よく熟和するものは、古今いまだその例を聞かず。妾といえども人類の子なり。一時の欲のために人の子を禽獣のごとくに使役し、一家の風俗を乱りて子孫の教育を害し、禍を天下に流して毒を後世に遺すもの、豈これを罪人と言わざるべけんや。

人あるいはいわく、「衆妾を養うもその処置よろしきを得れば人情を害することなし」と。こは夫子みずから言うの言葉なり。もしそれはたして然らば、一婦をして衆夫を養わしめ、これを男妾と名づけて家族第二等親の位にあらしめなば如何。かくのごとくしてよくその家を治め、人間交際の大義に毫も害することなくば、余が喋々の議論をもやめ、口を閉ざしてまた言わざるべし。天下の男子よろしくみずから顧みるべし。或る人またいわく、「妾を養うは後あらしめんがためなり、孟子の教えに不孝に三つあり、後なきを大なりとす」と。余答えていわく、天理に戻ることを唱うる者は孟子にても孔子にても遠慮に及ばず、これを罪人と言いて可なり。妻を娶り、子を生まざればとてこれを大不孝とは何事ぞ。遁辞と言うもあまりはなはだしからずや。

いやしくも人心を具えたる者なれば、誰か孟子の妄言を信ぜん。