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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

吉川英治『宮本武蔵(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵、宮本武蔵。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 231,525 字 · 463 页

青空文庫

――斬られたっ。

武蔵はそう感じた。ぱっと左の袖口が大きく破れて、腕が根元から剥き出しになってしまったのは、その辺の肉と一緒に、袂を斬り取られたのであると思った。

「八幡っ」

絶対な自己のほかに、神の名があった。自己の破れ目から、稲妻みたいにその声が迸った。

一転。

位置をかえて振向くと、自分のいたところへのめッて行く助九郎の腰と足の裏が見えた。

「――武蔵っ」

出淵孫兵衛が叫んだ。

村田と庄田は、

「やあ、口ほどもない」

横へ駈け廻ってくる。

武蔵はそれに対して、大地を踵で蹴った。彼のからだはそこらの低い松の梢をかすめるくらいな高さに躍り、その距離をさらに一躍、また一躍して、後も見ずに闇の中へ駈け入ってしまった。

「――汚し」

「――武蔵っ」

「恥を知れっ」

下の空濠へ急落している崖のあたりで、野獣の跳ぶような木の折れる音がした。――それがやむとまた、笛の音は、呂々と、星の空をながれて遊んでいた。

鶯

一

三十尺もある空濠だった。空濠といっても、深い闇の底には、雨水が溜っていないとは限らない。

灌木帯の崖を、勢いよく辷り落ちて来た武蔵は、そこに止まって石を抛ってみた。