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みやもとむさし

宮本武蔵(一)

吉川 英治

吉川英治『宮本武蔵(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵、宮本武蔵。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 231,525 字 · 463 页

青空文庫

四

四

お杉ばばの信仰をまねて、権叔父も掌をあわせた。

悲壮を過ぎて、滑稽を感じたのであろう、群衆はそれを見ると、クスリと笑った。

「誰だい、笑うやつは」

駕かきの一人が、それへ向って、怒るように呶鳴った。

「――何がおかしいんだ、笑いごッちゃねえぞ、このご隠居様は、遠い作州から出て来なすって、自分の息子の嫁を奪って逃げた野郎を討つために、先ごろからこの清水寺へ日参をしておいでなさるんだ。――きょうがその五十幾日目で、計らずも、茶わん坂で――そこにいる野郎よ――その相手の野郎が通るのを見つけたンだ」

こう一人が説明すると、また一人が、

「さすがに侍の筋というものは、違ったもんじゃねえか、あの年でよ、故郷にいれば、孫でも抱いて、楽なご隠居でいられる身を、旅に出て、息子のかわりに、家名の恥を雪ごうッていうんだから、頭が下がらあ」

――すぐほかの者がまた、

「俺たちだって、何もご隠居から毎日、酒代をいただいているからの、ごひいきになっているからのと、そんなケチな量見で加勢するわけじゃねえ。――あの年で、若い牢人を相手に、勝負しようっていう心根が、堪らねえんだ。――弱いほうにつくのは人情、当りめえだろう。