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えいがじだい

寺田寅彦随筆集 第二巻

寺田 寅彦

寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第二巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:映画時代、子猫、解かれた象、相対性原理側面観、怪異考、比較言語学における統計的研究法の可能性について、化け物の進化、ルクレチウスと科学、蓄音機、亮の追憶、一つの思考実験、電車の混雑について、浮世絵の曲線、二十四年前、伊吹山の句について、池、路傍の草、備忘録、日本楽器の名称、Liber Studiorum、時事雑感。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 207,099 字 · 419 页

青空文庫

夜中に沛然たる雨の音で目がさめる。およそこの人生に一文も金がかからず、無条件に理屈なしに楽しいものがあるとすれば、おそらくこの時の雨の音などがその一つでなければならない。これは夏のきらいな人にとってもたぶん同じであろうと思う。

冬を享楽するのには健康な金持ちでなければできない、それに文化的の設備が入用である。これに反して夏は貧血症の貧乏人の楽園であり自然の子の天地である。

涼味

涼しいという言葉の意味は存外複雑である。もちろん単に気温の低い事を意味するのではない。継続する暑さが短時間減退する場合の感覚をさして言うものとも一応は解釈される。しかし盛夏の候に涼味として享楽されるものはむしろ高温度と低温度の急激な交錯であるように見える。たとえば暑中氷倉の中に一時間もはいっているのは涼しさでなくて無気味な寒さである。扇風機の間断なき風は決して涼しいものではない。

夏の山路を歩いていると暑い空気のかたまりと冷たい空気のかたまりとが複雑に混合しているのを感じる。そのかたまりの一つ一つの粒が大きい事もあるし小さい事もある。この粒の大きさの適当である時に最大の涼味を感じさせるようである。