轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しょうしょうしげもとのはは
少将滋幹の母
谷崎 潤一郎
「毎日新聞」毎日新聞社、1949(昭和24)年11月16日~1950(昭和25)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 83,234 字 · 160 页
母のようにみめかたちのすぐれた人は稀であると云うことは、女房たちが噂するのを聞いて知っていたので、うつくしいと云うのはこう云う顔のことなのかと思ってはいたが、ほんとうにそうと得心が行っていたのではなかった。たゞ母の衣には、何と云うものか特別に甘い匂のする香が薫きしめてあったので、じっと無言で抱きしめられている間が好い気持であった。そして家に帰ってからも、なお二三日はその移り香が頬や掌や袂などに沁み着いていたので、母が自分の身に附き添うているように思えた。
幼年の彼が母をほんとうに美しいと感じたのは、あの、平中に掴まえられて腕に歌を書かれた時のことであった。あれは渡殿の軒に近く紅梅が綻びていたことを思うと、或る春の日のことであったのは間違いないが、彼が西の対屋の簀子のところで、二三人の女童を相手に遊んでいると、大人の男がニコ/\しながら傍へ寄って来て、
「もし、………もうお母さまにお会いになったんですか」
と、そう云って彼の肩へ手を置いたので、滋幹は、
「まだ、………」
と云おうとしたけれども、そんなことを云ってよいかどうか分らないので、黙ってその大人の顔を見上げた。