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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)

山の憶い出 上

木暮 理太郎

木暮理太郎『山の憶い出 上』。同一底本的分册已合并为一书。收入:笛吹川の上流(東沢と西沢)、奥秩父の山旅日記、釜沢行、秩父の奥山、利根川水源地の山々、秋の鬼怒沼 、美ヶ原、木曽駒と甲斐駒、黒部川奥の山旅、黒部川を遡る 、針木峠の林道 、春の大方山、三国山と苗場山、八ヶ峰の断裂 。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 284,014 字 · 565 页

青空文庫

雲が起って雷鳴を聞いてから、刈り取った麦を三把束ねないうちに雨が落ちて来るというので、古くから斯う言いなされていた。この夕立が北に向わずして、まっしぐらに東の方へ驀進して行く光景を眺めていると秩父山脈の長大なることが今更のように強く印象されるのである。

霧の深い朝は午後に夕立の起ることが多い。其霧が西北の風に吹かれて、日光が洩れて来るようになると時として白い虹の立つことがある。そんな時には屹度大夕立の起る前兆だといわれている。日が高くなるに連れて空は名残なく晴れ渡るが、積雲の塊は早くも山の端に屯している。午後になると夫がそろそろ動き出す。遠雷の響に昼寝の夢から覚めて、門の前に立って四方を見渡すと、日光、赤城、榛名、御荷鉾の各方面に夕立が始まっている。中にも御荷鉾山のあたりのものは殊に勢が激しいと見えて、銅色をした雲の峰がむくむく湧き上る後ろでは、電光が頻りに閃いて、遠雷の音が空気よりも大地を伝って響いて来る。さては来るなと思って見ている中に、長大なる巻層雲の先駆は真綿を繰り出すようにどんどん東の方へ延びて行く。嵐を孕み霹靂を載せた真黒な撥墨の雲が蓬勃として自ら止まるにも止まれないといった勢で、噴泉の如く下から湧き上っては横に崩れる。