轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
吉川英治『忘れ残りの記』。同一底本的分册已合并为一书。收入:忘れ残りの記、年譜。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,050 字 · 383 页
十四歳のときの、二月頃だった。
春には、小学校から中学へ入れるつもりだった。学校の成績は、中くらいで、平凡な一生徒だったが、中学に入れる自信ぐらいはもちろんもっていた。ちょうど久保山の神奈川県立中学の新しい校舎が新築されていて、その輝く大校舎を望むごとに「卒業したら、あそこへ通学するのだ」と、胸をふくらませていたものだった。
ところが、二月の或るお昼休みの時間。――その頃、小学校では、家の近い生徒は弁当を持たずにゆき、お昼休み時間に各家庭へ喰べに帰ることもゆるされていたのである。
ぼくもよく昼休みには家に帰った。その日も、お茶漬か何か掻っこんでいた。すると、いつも、表から帰るはずの父が、裏木戸から戻って来た。
見ると、父は、どろんこといっていいほど泥酔していた。フロックコートを着ていた。その洋服も靴も帽子も、地面で寝て来たかと思われるほど汚れている。何か、ぎょっと人に映るような顔色と眼であった。どすんと、大きな物音をさせて、勝手元の何かにつまずいて、ぶっ仆れたのを、母が扶け起して、家の中へひきずり上げるように抱えこんだ。
ぼくにも、ただならない父の容子が分ったのであろう、あわてて膳のそばを離れ、学校履きの草履袋を手にもつや否や、表からコソコソ出て行ってしまおうとした。