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おもいだすことなど

思い出す事など

夏目 漱石

经历生死关头后,作者用细腻笔触回忆那段病中时光,那些细微的光影与人事,读来既心酸又温暖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,003 字 · 113 页

青空文庫

六

六

始めて読書欲の萌した頃、東京の玄耳君から小包で酔古堂剣掃と列仙伝を送ってくれた。この列仙伝は帙入の唐本で、少し手荒に取扱うと紙がぴりぴり破れそうに見えるほどの古い――古いと云うよりもむしろ汚ない――本であった。余は寝ながらこの汚ない本を取り上げて、その中にある仙人の挿画を一々丁寧に見た。そうしてこれら仙人の髯の模様だの、頭の恰好だのを互に比較して楽んだ。その時は画工の筆癖から来る特色を忘れて、こう云う頭の平らな男でなければ仙人になる資格がないのだろうと思ったり、またこう云う疎な髯を風に吹かせなければ仙人の群に入る事は覚束ないのだろうと思ったりして、ひたすら彼等の容貌に表われてくる共通な骨相を飽かず眺めた。本文も無論読んで見た。平生気の短かい時にはとても見出す事のできない悠長な心をめでたく意識しながら読んで見た。――余は今の青年のうちに列仙伝を一枚でも読む勇気と時間をもっているものは一人もあるまいと思う。年を取った余も実を云うとこの時始めて列仙伝と云う書物を開けたのである。

けれども惜しい事に本文は挿画ほど雅に行かなかった。中には欲の塊が羽化したような俗な仙人もあった。